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【本当の】新釈 猫の妙術【道理】 [その他]

『4月まとめ』でも触れた『猫の妙術』が面白かったので紹介したい。

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どういった本かというと
鼠捕りの名人である古猫が他の猫と一人の剣術家に教えを説く
というもの。

コミカルな感じでとても読みやすいのだが、その内容はとてつもなく深い。
宮本武蔵の『五輪書』との共通点もあって、よりその理解を進めてくれる。
この本でアハ体験をした人も多いのではなかろうか、と思う。

時代は江戸中期。
ある流派で免許皆伝まで許されたものの何か物足りなさを感じている、
猫と話せる剣術家、というのが主人公の勝軒という男。
この勝軒の家に猫ほどの大きさのネズミが現れ暴れまわる。
家猫では歯が立たないので、
腕に覚えあり!という猫を次々を連れてくるも皆惨敗。
最後に連れてきた、庭から縁側に上がるのも覚束ないような古猫が、
見事その大ねずみを仕留めてしまう。
というのが第一章。

第二章では負けた猫たちの敗因をそれぞれ古猫に教えてもらい、
第三章では剣術家の勝軒が古猫に教えを乞う、
という3章と訳者さんの解説(これも面白い!)という構成の本になっている。

腕に覚えあり!という猫たちは、それぞれ自信満々にネズミに挑むのだが、
その自信がフリとなっているのが現代のお笑いの原点を見てるようで興味深い。
第二章では、古猫がそれぞれの猫の敗因を語り、
各々の猫がどうやってネズミを捕るのかを聞き出すのに、
「それは立派じゃの」とか
「なるほど、それじゃ、鼠のほうもたまらんだろうな」とか
「たいしたもんじゃのう」とか
負けた猫をたちを調子に乗らせて色々と語らせる場面も面白い。
そして「しかし、おぬしも負けたそうじゃな」とくる。

そんなコミカルな雰囲気から敗因を語り出すと説得力があって引き込まれてしまう。
「道理」、「浩然の気」、不自然な「念」と道理をもたらす「感」、
が語られ、それらが一々面白く興味深い。
要は「本当の道理」を得られるように鍛錬しないさい、ということだと思う。

第三章では剣術家の勝軒が古猫に奥義を尋ねるが、結局奥義などないと言われる。
これは第二章で、
「単純、簡潔な技の中にこそ、無限の変化を可能とする道理が含まれている」
と黒猫に説いたことにもつながる。

「道理」を得るのは難しいが、
「誰の内にも必ず道理はあるからな」と言ってくれている古猫に優しさを感じる。
結局「道理」とは言葉では言い表せられないものなので経験から得るしかない、
というようなことが語られていて「五輪書」の「空の巻」と重なる。

最後に訳者の方の解説があり、これもまた面白い!
現代の視点で例えてくれているので分かりやすい。
理解が深まるので、また最初から読みたくなってしまう。
というわけで、しばらくはループして何回も読んでしまいそう。

「五輪書」が世間に知られるのが明治時代に入ってからなので、
「猫の妙術」の著者が「五輪書」を参考にしたとは思えない。
しかし共通点が多くそれぞれがそれぞれを補完しあうような不思議な感じ。
「五輪書」を読んで面白いと思った人には、是非是非お勧めの一冊。



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